私たちの住む米原市春照(すいじょ)は滋賀県北部・霊峰伊吹山麓の麓にあります。
伊吹山は戦国時代、織田信長が薬草園を開き、3,000種類もの薬草で人々の病を治していたといわれています。店前の北国脇往還は滋賀県木之本と岐阜県関ヶ原を結んでいます。参勤交代時代には越前や加賀の大名が中山道へ向かう近道として利用されていました。その宿場町「春照宿」は江戸時代頃には武士や雑役の宿として、大変にぎわっていたそうです。
300年前、先祖が「瓢箪屋」を旅籠として開業しました。その後、明治・大正時代も東西を行き交う人々の宿として発展し、昭和に入ると、祖父である6代目武一郎が料理屋業を取り入れ、本膳料理、仕出し料理を始めます。富山の売薬人、セメント工場工員が泊まる宿としてだけでなく、地元の方々の冠婚葬祭、会議所としても使っていただけるようになりました。
そして1992年、父・光明がフランス料理を取り入れ、瓢箪屋の一室で「レストラン ベルソー」を始めます。私が生まれたのもその頃です。学校から帰ってくると、厨房から「おかえり」が聞こえ、毎晩のように遠方や地元のお客様でにぎわっていました。今も昔も、「瓢箪屋」「ベルソー」はアットホームなおもてなしと、素材を生かした温かな料理でお客様と繋がってきたのです。
photo by 三木匡宏(Masahiro Miki)
このような歴史を受け継ぐ者として伊吹の文化、自然のおおらかさを全国に、そして次世代に料理を通して伝えることが出来れば幸いです。伊吹山の麓という土地の空気や水、食材、そして人の気質、これらが自然と交わり合うようにして生まれる感性を楽しんでいただける店。私たちの考える店はそのような料理屋でありたいと思います。
伊吹山の自然は四季折々に表情を変え皆さま方を迎えてくれるでしょう。
そして今日も私たちは野菜を採り、湧き水を汲み、野草を活け、オーブンに火を点して皆さまをお待ちしております。